社会復帰へ踏みだした一歩 1/3

Y社を突然、休職宣言したものの、
唯一の心残りがありました。

私の方からお頼みし、会社に引き入れて下さった、
S専務に対して、恩に報いることができず、
申し訳ない気持ちをまだお話できずにいたことでした。

Y社の休職期間は半年間だったのですが、
自宅で療養していても電話が鳴ったら、
その都度、会社からではないかと思い、
いつもビクついてました。

おそらく、その期間は被害者意識が心に重くのしかかり、
妄想に囚われ続けていたように思います。

それでも、私は意を決して、S専務に直接連絡し、
ご多忙の中、時間を作って頂き、
久しぶりにお会いすることになりました。

お会いした場所は、”スーパー銭湯”でした。
男同士裸で、お風呂に浸かりながら、
気が楽になり会話は弾みました。

湯船近くで並んで腰を下ろした時、
S専務が私に向かって、

「俺たち、年は離れているけど、
親子と言うより、兄弟の仲だよな。
これからも、俺になんでも相談しろ。」

と言われた時、亡くなったばかりの父と
同じような年齢でしたが、
純粋な思いやりのお気持ちに触れ、
思わず私の胸は詰まりました。

この時、S専務の裸の姿を初めて拝見した。
ご自身の身体のことについて、
それとなく耳にしてはいたのですが、
素人の目で見ても、満身創痍のお身体でした。

そのようなお身体を張ってY社の第一線で
仕事をされていたのですから、
私の置かれた状態と比べると情けなく思え、
自分を責めかけておりました。

スーパー銭湯から出て別れ際、S専務は私に、

「身体をしっかり直して、また戻ってこい。」

と言われましたが、私は力のない返事しかできませんでした。

「もう戻れない」

そう自分の心に言い聞かせていましたから…

そんな返事しかできなかったように思います。

「本当に申し訳ない」

という想いはお伝えできず、S専務と別れてから、
感謝の思いが突然こみ上げ、
とめどもなく涙がひたすら出てきました。

私のこれまでの人生で、このS専務ほど本気で私に関わって頂いた方は
まだ出会ったことはありません。

男気を十分に感じさせる方でしたので、
“人生を全うしていない”、私のようなクズ同然の人間にとっては、
信じられないくらいの関係でした。

ご家庭事情で小学校までしか通えませんでした。
「人に絶対負けない」という並々ならぬ努力と信念のもと、
想像を絶する程の苦労の末、Y社の専務まで登りつめました。

そのサクセスストーリーを初めて聞いた時、
すべて実体験に基づいた話でしたので、
深い感銘を受け共感したことを覚えています。

「S専務の部下としてY社で働きたい」
本気でそう思っていました。

しかし、一方で私の潜在意識の中では、

「S専務のように、身も心も犠牲にして
会社に捧げることなど私にはできない」

そんな想いもありました。

このように私の心の中では2つの相反する想いがあり、
自分の行くべき方向性が定まらない、
言わば、”中途半端な心境”でした。

この“中途半端な心境”こそが、私の思考のクセであり、
行動の迷いを生み出している原因の1つであったことが、
10年以上経過した今に至ってようやく気がつきました。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。
ご興味、ご関心を持たれましたら、
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どうぞよろしくお願い致します。

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